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ピケティ「21世紀の資本論」に対する疑問
Date:2015/01/13(Thu)
以前このコーナーでもピケティの「21世紀の資本論」を取り上げたことがありましたが、その時は彼が言わんとしていることを賞賛を込めて紹介したように記憶しています。即ち、いま世界を覆っている資本主義をこのまま放っておくと所得の格差がどんどん広がり色々な問題が起きるので適当な処置を講じないといけないのではないかとの警鐘を鳴らしているからです。この言い分には問題ないのですが、その根拠になっている彼の分析方法には必ずしも普遍性がないとの指摘が出てきています。
アインシュタインの相対性理論といえば E=mc2 という公式が有名ですが、ピケティの労作をひと言でいえば、資本所得率は経済成長率よりも高い、ということになるでしょう。即ち、持たざる者はいくら頑張って稼いでも持てる者が得るものに勝てない、ということです。不動産、株、国債などを持つ者が得るもの、即ち、地代、配当、利子などの伸び率は長い目で見ると経済成長率よりも大きいということが過去のデータを調べて分かったというものです。
しかし、日本の経済学者によれば、フランスを筆頭とする大陸ヨーロッパの諸国では確かに20世紀半ばまでその通りであったが、例えばアメリカなどは20世紀後半から起業家収益が大きくなり、さらに「賃金、報酬、年金」というジャンルが飛躍的に伸びていることが指摘されています。「賃金、報酬、年金」には所謂サラリーマンの賃金も入りますが、アメリカで大きく伸びているのはスーパーマネージャー、要すれば大企業や金融業界の役員たちのことです。起業家収益というとIT企業の起業家が連想されますが、スポーツ選手や芸能人も入る、といえばアメリカでは成程と思われるでしょう。一方で資本所得はアメリカでは顕著な伸びは見えません。そのアメリカこそ所得格差拡大が問題になってきているわけで、この点においてピケティの理論には欠陥があるのではないか、というのが最近目にする記事です。
資本主義といえば米英が本拠と思われており、グローバル化といえば「米英流」に近づくことと同意語のように捉えてしまうほどです。一方、最近よく耳にするコーポレートガバナンスの視点から見ると、ある機関によるアンケート調査によれば「米英」では70%以上が会社は株主のために存在すると答えており、一方でドイツでは80%以上、日本ではなんと97%が会社は全利害関係者のためと答えています。期せずして、後者の二国では米英ほどの所得格差拡大は起きていません。即ち、このコーポレートガバナンスの違いが所得格差拡大の程度に大きな違いを生んでいるのではないか、資本所得云々もひとつの原因ではあるが、むしろコーポレートガバナンスのあり方に大きな理由が潜んでいるのではないか、という考え方が日本の経済学者のあいだで話題になってきているとのことです。
日本の企業が頑張ることでこの考え方を実証面で証明することになり、ひいては絶対に無理と言われているノーベル経済学賞を日本人が取ることになるのではないかと期待しているのですが・・・
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