概 要
Ⅰ、目的
英国市場協議会(英文名 British Market Council、BMC)はその目的として「日英間の健全・安定的なパートナーシップ、貿易・投資を含む経済関係の確立、維持に寄与すること」を規約にうたっております。
Ⅱ、事業
1. 貿易促進
BMCは1973年設立以来、英国からの輸入促進を主な目的として、また対英進出企業のために様々な事業を行ってまいりました。英国政府は1988年「オポチュニティー・ジャパン」と命名した対日輸出キャンペーンを開始し、その後呼称を変えてはいますが精神は今日まで継承しています。この対日輸出キャンペーンに対応してBMCは1988年にタスク・フォース(1998年に輸入促進部会、2003年に貿易促進部会と改称)を設立、以下の様な事業を支援してまいりました。
(1)
見本市・商品展示会の開催、市場調査、各種の刊行物の発行。
(2)
日英双方向での、通商使節団・各種商品関連ミッションの派遣、受け入れ。
(3)
両国間の投資の促進、第三国市場を含む日英産業協力の促進。
(4)
英国における日本市場研究フォーラム・セミナーの開催・講師の派遣。資料ないし助言の提供。
これらの事業は、原則として貿易促進部会会員が支払う会費により支援しております。BMCの目的達成に特に効果ありと認められた事業に対しては、関係官庁である経済産業省のご配慮により助成を受けてまいりましたが、公益法人等の改編により、近年は一般財団法人からの助成や協力金を受けております。
2. 日英パートナーシップの促進及び会員相互の親睦
BMCは日英パートナーシップの促進を目指し、駐日英国大使館と協力し次のような行事、事業を行ってきました。又会員相互のネットワーク作りのために親睦会等を開催しています。
(1)
新年会開催
毎年1月下旬に帝国ホテル桜の間で開催。近年150名を超える会員・関係者の参加を得ている。
(2)
貿易促進部会開催
毎年4月中旬に開催。その年度の駐日英国大使館を支援する事業を審議し決定します。
(3)
駐日英国大使館内会場にて「理事会」・「通常総会」を同時開催
毎年6月に、「理事会」・「通常総会」を駐日英国大使館ニューホールで行い、終了後には会員・駐日英国大使館関係者の懇親会を開催します。
(4)
駐日英国大使館・BMC共催日英ビジネスパートナーシップセミナー開催
1999年から毎年1回大使館との共催でブリティッシュヒルズ(福島県にある英国村)にて開催しておりました。2013年までに15回開催済みですが、(第13回のみ東北大震災のため東京で開催)2014年、第16回以降はより多くの方々に参加いただく為に都内で開催しております。
(5)
クリスマス・パーティー開催
12月中旬に開催。70名前後の会員・関係者が参加しイングリッシュパブのハブにて開催します。
Ⅲ、沿革
経済産業省は、1973年(当時は通商産業省)第一次訪英輸入促進ミッションを派遣、BMCはそのフォローアップとして、同ミッション参加者を中心に設立された民間の任意団体です。このミッションの団長であった松尾泰一郎氏が初代会長に就任、25年間会長を続けましたが、1998年7月、三菱商事(株)相談役であった諸橋晋六氏に交代、その後2006年6月、三井物産(株)顧問 上島重二氏に、さらに2011年6月に住友商事(株)名誉顧問 宮原賢次氏、2015年6月に丸紅(株)会長 朝田照男氏に引き継がれ、2021年6月に伊藤忠商事(株)副会長 鈴木善久氏が現在の会長に就任致しました。
英国政府による対日輸出の歴史を振り返りますと、1988年「オポチュニティー・ジャパン」が開始、この成果を受け、1991年4月には「プライオリティー・ジャパン」キャンペーンを打ち出し、1994年3月にこのキャンペーンが成功裏に終了すると1994年4月からは「アクション・ジャパン」を開始、これが1998年4月には「新生アクション・ジャパン」として受継がれました。2000年5月から、このキャンペーンを「トレード・パートナーズUK」と改称、それまでの相手国別輸出キャンペーンを全世界向けに一本化しました。これに先立ち1999年に英国政府はBritish Trade International(英国海外貿易総省)を設立。2003年この組織が投資部門と合体しUK Trade & Investment(英国貿易投資総省)となりました。
2012年からは「GREAT2012」キャンペーンを開始、翌年以降も「GREAT」キャンペーンが継続されています。これは、それぞれの分野に関して「Fashion is GREAT Britain」 「Make it in GREAT Britain」「Innovation is GREAT」「Business is GREAT」というように、英国が競争力、強みを持つ分野を知らしめるととともに具体的なビジネスの拡大を狙ったもので、BMCもこのキャンペーンに協力しています。
Ⅳ、最近の活動
2023年度BMCの英国大使館支援事業は以下の通りです。
(1)
革新的技術を有する英国企業の対日進出支援事業(ITIC助成事業)
駐日英国大使館 ビジネス・通商部(前国際通商部) テクノロジー・トレード・チームは、革新的な技術を有するスタートアップ企業を含む英国企業の日本市場への進出、事業の成功、成長を支援するため、英国企業の技術、製品の展示、紹介、日本企業とのパートナーシップ構築などを支援してきている。
その活動の中で、日本で開催される先端技術・製品の展示会に出展することも行ってきている。令和4年10月には、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が主催する日本国内最大規模の『Society 5.0 総合展』CEATEC 2022に4年ぶりに英国パビリオンを出展、英国企業8社の出展を支援した。この出展に英国市場協議会も資金支援を行った。
2023年は、5月24-26日にパシフィコ横浜にて開催された「人とくるまのテクノロジー展2023」に出展、又、10月17~20日に開催のCEATEC 2023で英国テックコンファレンスを開催、量子コンピューティングとAIをテーマに2つのコンファレンスを10月19日及び20日に実施した。このうち、AIのコンファレンスについて、(一財)貿易・産業協力振興財団(ITIC)助成金を利用させていただいた。CEATEC 2023も含めた事業全体の目標はアウトプット指標(日本企業との商談実現件数)で260件、更にはアウトカム指標(商談による成約件数)で20件を目標とした。また、日本企業との商談を成功させるため、以下の4つの施策を講じた。
(1)日英テック企業のエコシステム形成
(2)リバースピッチの実施
(3)日本のスマートシティ調査報告書の活用
(4)テクノロジーセクターのマトリクス作成・分析
事業の結果、以下の成果が得られた。
アウトプット目標 260 件に対して、実績 181 件、アウトカム目標 20 件に対して実績 10 件であった。
ITIC助成金を利用したAIセミナーセッションに登壇した英国企業の1社であるSecondmind社は、マツダ株式会社を含む新規投資家から合計1,600万ドル資金調達を受けた。今後マツダ株式会社との戦略的パートナーシップを拡大していく方針。
(2)
第7回日英原子力産業フォーラム
駐日英国大使公邸にて、2023年10月24日夕方よりネットワーキング・レセプション、25日に日英原子力産業フォーラムが開催された。本年は、ロシアのウクライナ侵攻に伴い、エネルギー安全保障、経済安全保障の観点から原子力エネルギーの日英政府内での位置づけが大きく変わり、より安全性の高い次世代原子力の開発、実用化を進めるという意向を受け、昨年以上に活発な議論がなされた。
第一セッションでは、新規の原子力建設・先端原子力技術について、昨年以上に色々な技術の紹介、日英協力の現状が報告された。経済産業省 資源エネルギー庁 電力・ガス事業部 原子力政策課 安良岡国際原子力調整官より、日本のエネルギー政策、原子力の政策、エネルギー確保の重要性、原子力利用、先端技術、廃炉での日英協力が説明された。
英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省 Deputy Director Mark Hastie-Oldland氏より英国の原子力政策の変化について説明され、原子力はエネルギー安全保障のツールと位置付けられていることを指摘、リスクをシェアするファイナンス・モデルを追求することが述べられた。その後、UK National Nuclear Laboratoryより、日英の高温ガス炉についての協力、ロールスロイスの進める小型モジュール原子炉の開発、CORE Power(当会会員企業も出資)の洋上原子力発電、Molten FLEXより柔軟な安全性の高い小型原子炉、UK Atomic Energy Authorityより英国核融合技術の開発状況の紹介があった。核融合を2040年代に商業化する目標や商業運転展開始前の現時点から核融合炉廃炉の方法も併せて、研究、開発していることが説明された。英国での原子力発電を利用した電気分解による水素製造では、競争力のある水素価格にて供給できるとの見込みも示された。
第二セッションでは、出展企業、経産省の展示の紹介とネットワーキングが行われ、第三セッションでは、福島第一原子力発電所の廃炉の進捗を含めて、日英の廃炉、放射性廃棄物の管理、サプライチェーンにおける協力につき講演が行われた。
英国企業 16 社、日本企業 22 社、 両国政府関係者を含む 105 名が参加、英国企業からは、有効な新規コンタクトの開拓に役立ったとのコメントや非常に有益かつタイムリーなディスカッションを行う機会となり、今後フォローアップすべき多くのアクションがあるとのコメントが寄せられた。
(3)
第25回日英ビジネス・パートナーシップ・セミナー
2023年10月30日、当会会員でもある一般社団法人 日本貿易会との共催で、日本貿易会の会議室にて、第25回日英ビジネス・パートナーシップ・セミナー(BPS)をハイブリッド開催した。約60名の会員、関係者の方々に会場、オンラインでご参加いただいた。
第25回のテーマは、英国が2023年7月16日、ニュージーランドで、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)への加入に関する議定書に署名したことを受け、「英国のCPTPP参加に伴う日英の第三国連携の可能性」とした。
経済産業省・通商政策局・経済連携課 山岸課長補佐より日本視点での「今後の日英協力」をテーマに講演頂いた。CPTPPへの英国の加盟手続きや日英にとってのメリット、日英協力の方向性、第三国連携に向けた動向などが説明された。次に、当協議会のメンバーでもあるスタンダードチャータード銀行浅井日本代表兼最高経営責任者より第三国における金融連携について講演が行われた。UK輸出信用のメリット、両国の輸出信用を利用した第三国でのプロジェクトへのファイナンスの具体例や、今後のサプライチェーンの多様化における両国間の協力分野などが説明された。
最後に英国ビジネス・通商省 キャサリン・メリーウェザー カントリー パートナー マネジャーより、英国側から見た日英連携についてオンラインにて、講演頂いた。日英の第三国連携について、洋上風力、スマートシティ、都市開発、輸送インフラなどでの具体例を挙げ、日英のそれぞれの強みを生かした連携につき説明された。各講師への質疑応答も活発に行われ、特に、今後の連携の拡大のための第三国連携案件創出のメカニズムなどについても議論された。
(4)
Export to Japanジャパン・ビジネス・エクスプレス・サービス(BES)事業
幅広い分野の英国企業に対して市場調査から日本のパートナー探し、そして日本での事業立ち上げまで、日本市場参入のあらゆる段階でのサポートを行う、Export to Japan(E2J)ジャパン・ビジネス・エクスプレス・サービス(BES)について、昨年度はITIC助成金を利用して支援し大きな成果を得た。本年も貿易促進部会として継続支援を実施した。
2022年度の対応案件数38件に比べ、本年度は英国企業の対日市場への関心の高まりを象徴する214件の対応を行った。対応した英国企業の分野は、食品・飲料(全体の21%)、技術サービス・ソリューション提供(21%)、消費・衣料・生活用品(17%)がトップ3で、他にもヘルスケア・医療、モビリティ関連、製造業、教育・研修、宝石、ペット用品、アート・趣味、スポーツイベント、エネルギー・化学品等など非常に多岐にわたっている。提供したサービス内容は、日本におけるパートナーの調査・紹介・仲介、販売業者の調査・紹介・仲介、市場調査、ビジネス機会分析等である。
(5)
WIND EXPO 2024
2024年2月28日-3月1日に東京ビッグサイトで開催されたWIND EXPO春2024に駐日英国大使館及びスコットランド国際開発庁がそれぞれ、英国パビリオン、スコットランドパビリオンを出展、英国より15社、スコットランドより12社のUK洋上風力発電関連企業が展示、商談を行った。
商談を効率よく進めるため1週間前の2月21日英国洋上風力ビジネスオンラインセミナー、2月22日スコットランド洋上風力ビジネスオンラインセミナーを開催、英国15社、スコットランド12社の技術につきプレゼン(ピッチ)を実施、又、2月27日には、駐日英国大使館にて、英国洋上風力パネルディスカッションイベントが開催された。パネルディスカッションでは、①支援機関と開発、②デザイン、エンジニアリング、③パワーケーブル、海中・海底送電、④海洋、建設、O&Mサポート、ソリューションについて、英国及びスコットランドの出展27社が順次登壇、モデレーターの質問に各社が答える形で、欧州の洋上風力の知見・経験を日本の地質や地震等の要因を考慮して日本での開発に適用するソリューションなどが説明された。
英国企業の日本市場への考え方や関わり方に昨年とは違いが見られ、4社は、展示会に去年より大きな個別のブーススタイルを設け、ClassNKとの面談、日本企業とのパートナーシップについてアドバイスを求める企業が出てくるなど、去年から大きな前進があったと考えられる。
当協議会は、英国及びスコットランドの洋上風力発電サプライチェーン関連企業を、洋上風力発電所のライフサイクルにおいて、調査・FS、開発、風力タービン、補器類、据付・完工、O&Mの段階毎にまとめた英国洋上風力発電関連企業ガイドの作成を支援した(UK Offshore Wind Supply Chain Brochure)。日英のガイドブックへの反響は非常に大きく、中国語、韓国語への翻訳も開始している。
Ⅴ、年会費
1、一般会員 15万円
2、貿易促進部会会員 一般会費以外に50万円